ぜんそくについて
ぜんそくについて
気道に炎症が起こることで、咳、痰、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音がでる)、息苦しさ・胸苦しさなどの症状があらわれる病気です。
気道とは、主に気管・気管支を意味し、呼吸した空気が通る道のことです。気管支は、内側から粘膜、粘膜下組織、平滑筋などでできています。
疫学
日本においては、小児の有病率15%程、成人の有病率は、10.4% (2017年)であり、ここ数十年で増加しています。若年ほど男性が多く、思春期は女性多いです。
学童の発症時期は、2~3歳 をピークにその後緩やかに低下する傾向がでしたが、近年,発症の低年齢化がみられます。
多くの喘息のお子さんは2歳から3歳までの間に発症し、12歳から15歳の思春期の頃に軽快していきますが、20%から30%の患者さんは成人喘息に移行していきます。
成人では成人発症、特に中高年発症が多いです。1)
病態
気道の免疫応答は、1型~3型の3つのタイプに分けられ、喘息では主に2型炎症(タイプ2炎症)が関わっていると考えられています。2)
2型炎症は、気道・肺疾患と密接な関係にあり、喘息の診断や治療に直結します。
ぜんそくのほか、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎などにも関係していると考えられております。
| 2型炎症 | 非2型炎症 | |
|---|---|---|
| 検査の特徴 | 血中好酸球≧300μl FeNO≧50ppb 特異的IgE上昇 |
左記以外 |
| 副鼻腔炎の合併 | 多い | 少ない |
| 増悪リスク | 血中好酸球数増多 | アトピー性皮膚炎合併 |
診断
診断には、呼吸機能検査、気道過敏性検査、血中好酸球数、呼気NO濃度(FeNO)、アレルゲン・血中IgEの評価が有用です。
自己管理として、ピークフローの計測も有用です。
ERCA(C)
原因
ぜんそくの発作は、風邪、運動、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)、たばこ、薬、気温や気圧の変化、精神的なストレスなど、さまざまな刺激が原因となって起こります。
ERCA(C)
よくある症状(小児)
よくある症状
治療
ぜんそくは発作が起きたときだけ治療するのでは、治癒することはできません。このため、治療薬には、大もとを抑えるため継続して使用する「長期管理薬(コントローラー)」 と、くるしい発作が起きたときに短期的に使用する「発作治療薬(リリーバー)」の2つがあります。
良好なコントロールを保つためには、長期管理薬による治療を、専門医師の管理のもとで、きちんと続けることが大切です。
乳児・小児ではマスクタイプのネブライザー・スペーサー、学童からは成人に準じたものもしくは、マウスピースつきスペーサーなどでの吸入剤・貼付剤などで治療をします。
- ネブライザー
- スペーサー
- 吸入剤
生物学的製剤について
ぜんそくの治療には、近年、生物学的製剤と呼ばれる、喘息の増悪原因となる分子を標的とした抗体製剤で、アレルギー反応を抑えることで喘息の症状をコントロールします。現在、5種類が承認されており、それぞれ作用機序が異なります。
5種の生物学的製剤は、2型ぜん息に有効性が高いです。実際にどの薬を使うかは、費用、投与間隔、併存症、自己注射の可否、長期安全性を考慮して、主治医と相談して決めることになります。
| ゾレア® | ヌーカラ® | ファセンラ® | デュピクセント® | テゼスパイア® | |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般名 | オマリズマブ | メポリズマブ | ベンラリズマブ | デュピルマブ | テゼペルマブ |
| 薬理機序 | 抗IgE抗体 | 抗IL-5抗体 | 抗IL-5R抗体 | 抗IL-4Rα抗体 | 抗TSLP抗体 |
| 投与方法 | 皮下注射 | ||||
| 投与間隔 | 2~4週毎 | 4週毎 | 4~8週毎 | 2~4週毎 | 4週毎 |
| バイオマーカー | 呼気NO | 血中好酸球 | 血中好酸球 | 呼気NO | ─ |
生物学的製剤は、吸入ステロイド薬などでコントロールが難しい重症喘息の治療に用いられます。
生物学的製剤の特徴は、ぜんそく増悪の原因となる特定の分子を標的とするため、効果が高く、標的以外への影響が少ないため、ステロイド全身投与と比較して副作用が少ない傾向があります。
注意点
生物学的製剤は、従来の薬に比べて高価です。高額医療制度などを活用することで、自己負担額を軽減することを推奨します。
副作用
注射部位の腫れや発赤などの副作用がまれにみられます。
また、アナフィラキシーといって、抗体製剤のアレルギー反応を引き起こす可能性もあるため、投与前に注意が必要です。
(文責:総合内科専門医・呼吸器専門医 松井彰)
1)タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会編集. タイプ2炎症バイオマーカーの手引き. 南江堂;2023
2)Nakamura Y et al. Japanese guidelines for adult asthma 2020. Allergol Int. 2020;69(4):519-48.
